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BMW meets Quantum

BMW


Quantum


BMW のサスペンション


ヨーロッパの自動車メーカーは、シャーシ構造からエンジン形状、そしてエクステリア&インテリア・デザインに至るまで、皆オリジナリティを保ちつつ独自の進化をとげています。
BMWも長大なストレート6をフロントの車軸よりも後方にマウントしつつ、車両重量配分を理想に近づけたエンジン・レイアウトや、フロントのマクファーソンストラット&リアのセミトレーリングアームと言ったシャーシ・レイアウトは黄金比となっています。
一般的に、フロントにストラット・タイプのサスペンションは重量車には剛性面で不向きだし、リアのセミトレは限界付近でオーバーステアな特性を示すことは良く知られています。
しかし、BMWは長年の積み重ねと経験に裏付けされた手法により、これらの欠点を克服し、その上でBMWらしさを演出しています。世界一の直6エンジンばかりがクローズアップされ、よくエンジン屋と表現されるBMWですが、実は一流のシャーシ屋でもあったわけです。

革新的 :: Inovative

先人達の言葉に「革新的とは物事の始まりであり、完成された物ではない。」と言う意味合いのことがありました。
BMWは革新的なサスペンション形式よりも、癖のあるセミトレとわかってセットアップする方が、遙かに完成度の高いシャーシとすることが出きると言うことを実践しているかのようです。

これは、M3 にも通じることですが、BMWのシャーシは総じて縦方向(=前後方向)に対して剛性が低く(=ブッシュが動きすぎる)、サスペンションアーム類に使用されているラバーブッシュの柔らかさが際だちます。その反面、横方向(またはヨー方向)に対しては剛性が高く設定されています。
BMWで、安易にビックキャリパーを装着するとジャダーが出るのはそのためで、ダンパーやスプリングを変更するときにも、コンフォートやツーリングスペックでは出てこない作動音も、スポーツやスーパースポーツスペックにすると、純正のアームのままではアーム類のブッシュのキャパシティを越えた入力(=コーナーリングスピードが上がるので)により、ダンパーやスプリングの作動音が問題になることがあります。
逆に言うと、ダンパーやスプリングを交換して走りに振った場合、ブッシュ類のアップグレード(ウレタンブッシュやモノボールへ打ち変え)も併行して行う必要があると言うことです。

BMWは、シャーシ本来のポテンシャルの高さは他社を抜きん出ているものの、全てがバランスの上で成り立っている車なだけに、総合的なシャーシ・チューニングが重要です。
とは言え、この固いシャーシを知ってしまうと、国産のチューニングカーがいかに低いレベルで馬力競争に走ってしまっているかを痛感させられます。


長い直線では600ps の国産チューニングカーに分があるものの、3つめのコーナーでは360ps のE46 M3が前を行く。2つのストレートと20カ所のコーナーがある鈴鹿であれば、その差は歴然としてくることでしょう。

M5 にしてもこの固いシャーシは健在で、それはサスペンションのセッティングをラグジーに振ったとしても、車体のポテンシャルがなければこういう風にはまとまらないであろうと言うすばらしい仕上がりを見せます。余裕があって初めて得られるその上質感は、やはり一流と言えるのではないでしょうか?