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Audi meets Quantum

Audi


Quantum

Quadram
AUDI のサスペンション
Suspension system of Audi

QRS (Quantum Racing Suspension) は AUDI に意外と早くから注目していました。
それは、QRSのエンジニアが80年代後半にドイツにあるレーシングチームの仕事をしていた関係で、Gr-A用ビッグ・クアトロのサスペンションを設計した ヨハン・ナップと交友があったり、まだ高校生だったトム・クリステンセンを日本にデビューさせた経緯もありますが、AUDI のクアトロ・システムに未来のシャーシ・チューニングの可能性を感じたからです。
80年代の WRC は、ランチャとアウディの フルタイム 4WDシステムが席巻。
その流れは、Porsche 959 にも影響を及ぼし、Carrera 4へと発展しました。

AUDIはV6/V8エンジンを、フロントの車軸よりも前方にマウントしています。
V8 Twin Turbo や V10 Twin Turbo を載せた RS6 も同様です。
当然、重量配分は理想からほど遠いエンジン・レイアウトです。
従って、限界付近の特性はアンダーステアに終始します。

そこでクアトロシステム。
センターデフを含む駆動系は比較的重量のあるパーツですが、AUDI はこれらが車体の低重心部に集中するため、数値以上に荷重移動が押さえられています。
BMW で感じるストレート6の重心の高い位置の重さからくる、コーナーリング時の車体内側のめくれ上げが少なく、意外にスポーティな反応を示します。
限界付近でのアンダーステアは、長年の積み重ねと経験に裏付けされたクアトロによりねじ伏せる力業。
タイヤのフリップの範囲でこれらの欠点を克服し、その上でAUDIらしさを演出しています。

RS4 / RS6で定番のフロントダブル・ウイッシュボーンや、S3 / TTSのフロントのマクファーソンストラット&リアのセミトレーリングアームと言ったシャーシは、車重を考慮して使い分けられ、十分な剛性感を示します。(一般的に、フロントにストラット・タイプのサスペンションは重量車には剛性面で不向き)

QRS では、90年代の A4, A6, TT に始まり、RS6, A8 まで全ての車を長期にわたりテストしてきました。AUDI の開発でむずかしい点は、重量配分に対するフロントとリアのバネレートのバランスと、マルチリンクによる作動抵抗=フリクションをいかに排除していくかに掛かってきます。
特にリアはコイルオーバーではない、マルチリンクを採用したレイアウトが多く、国産チューニングカーでは許されるダンパーのフリクションも、AUDI では全く通用しません。
ちまたで良くある安価な商品は、ダンパーのフリクション(=作動抵抗)をごまかすため、フロントに対するリアスプリングのバネレートをソフトに設定し、何となく乗り心地をごまかしている商品がほとんどです。おそらくこうしないことには、まともな乗り心地を確保できなかったのでしょう。
限界付近でのアンダーステアは仕方ないにしても、そもそもアンダーステアを助長するセッティングというのはいただけませんね?